引用元サイトはこちら

さて、家を買おう。こう思い立つのはどのタイミングでしょうか。

「結婚を機に」
「子供が出来たから」
「転勤が落ち着いたから」
「セカンドライフの住処として」

など、それは人それぞれでしょう。

どのタイミングであれ、多くの人にとって住宅の購入はそう何度も経験することではありません。

家族が所有している不動産に住む場合や相続で不動産を引き継ぐ場合、はたまた賃貸派の人々は、一度も住宅の購入を経験しないこともあるでしょう。

不動産の購入は日常的な行為ではありません。

それ故、いざ家を買おうと思い立っても、わからないことがたくさんあるのではないでしょうか。

そんな中でも今回はお金の話に特化して、不動産購入時の予算の立て方についてご紹介したいと思います。

不動産購入時の予算はどう考える?

物を買う場合、とりわけそれが高額な場合は、はじめに予算を立てるのが一般的でしょう。

不動産屋さんに「家を買いたい」と伝えても、「ご予算は?」と必ず聞かれます。

なんとなく3,000万、4,000万、5,000万という数字が浮かんだとしても、そのお金は一体どこから出てくるのでしょうか。

一般的に、住宅購入資金は次のように考えることができます。

住宅購入資金=①自己資金+②親などからの援助+③住宅ローン

これらをどのように考えていくのかを解説します。

①自己資金

これは今手元にある現預金を指します。

銀行預金として置いてある(=いつでも使える)資金ですので、イメージしやすいでしょう。

株式や投信も現金化すれば自己資金として利用可能ですが、換金のタイミングによっては損することもありますので慎重にご判断ください。

②親などからの援助

自己資金以外に援助が受けられる場合は、これも予算に組み込むことができます。

注意すべき点として、直系尊属(両親や祖父母)からの援助であれば「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税特例」が使え、一定額※まで非課税で贈与を受けることが可能です。

それ以外の人からの贈与の場合、もらう側の合計額が年間110万円を超えると贈与税の課税対象となります。

贈与税の有無や非課税特例利用の場合の確定申告など、事前に確認しておいた方が良いでしょう。

※時期や住宅の質、消費税率によって金額は異なります

③住宅ローン

①自己資金②親などからの援助だけで資金が賄えない場合、金融機関から借り入れすることになります。

住宅取得者の多くは住宅ローンを利用していますので、住宅ローンという言葉を知らないという人は少ないでしょう。

ローンをいくら借りるか、もしくはいくら借りられるかという話については後述します。

さて、①および②だけですべて賄える人の場合、予算の考え方は至極単純です。

用意できる資金から、今後の生活のためなど他の目的の資金を除いた金額が住宅に使える資金となります。

こういうケースは少数派でしょうが、仮に資金が1億円あったとして、老後資金に3,000万円残したいとするなら、7,000万円までは住宅に使うことができます。

反対に、住宅用の自己資金だけでは購入が難しい場合、住宅ローンの利用を検討することになります。

不動産購入時に住宅ローンで「借りられる額」

ここからは、理解しやすいように具体的な例を用いて考えていきましょう。

<ケーススタディ>
Aさん(35歳)
家族構成:妻(専業主婦)、子2人(7歳、5歳)
収入:年収600万円(額面)
貯蓄:1,000万円
現在の家賃(住居費):月額10万円

緊急時の資金として年収分(600万円)は手元に置いておきたい、また親からの援助は受けられない、と仮定します。

400万円で住宅を購入するのは現実的に難しいとして、住宅ローンを検討することにしましょう。

Aさんがいくらまでローンを借りられるか、これは金融機関によっても違うでしょうし、購入する物件の担保価値によっても変わってきます。

(ここでは話を簡略化するために、物件の担保価値という点については省略します。)

金融機関の審査基準に、返済比率という考え方があります。

これは、収入に対して返済がどれくらいの比率までであれば耐えられるかという考え方です。

具体的には、次のような数字になります。

  • 返済比率30%:年収600万円×30%=年額180万円(月額15万円)
  • 返済比率35%:年収600万円×35%=年額210万円(月額17.5万円)

仮に、B銀行の審査基準が返済比率35%だとしたら、月額17.5万円までの返済額であれば基準クリアということです。

ところで、借り入れ金額が同じでも、利率が違えば返済額は変わります。

住宅ローンの利率は、店頭利率そのものが適用されるのではなく、いくらかの優遇措置を受けて適用利率が決まります。

  • 店頭利率2.675%-優遇利率1.6%=適用利率1.075%(変動金利)
  • 店頭利率2.675%-優遇利率1.9%=適用利率0.775%(変動金利)

というような考え方です。

この優遇利率はローン審査によって決まりますので、事前に確定的なことは分かりません。
(担当者に聞けばおおよその予測数値は教えてくれますが)

しかし、実際の適用利率がいくらになるとしても、審査時に使われる利率はそれとは別の利率(審査利率)を使って判断されます。

この審査利率は非公開ですが、通常少し高めの数値に設定されています。ここでは、仮に3%として考えてみましょう。

なお、その他のローン条件として、返済期間は35年、ボーナス払い無しとします。

これらの数値から逆算すると、

借り入れ金額:4,500万円
返済月額:173,182円

という数値が近似値として出てきます。
(金融機関等のローンシミュレーションを利用して簡単に計算できます)

つまり、Aさんの場合、4,500万円までであれば借り入れ可能ということになります。

この場合、適用利率が0.775%だとすると、実際の返済月額は122,364円になります。

これがいわゆる「借りられる額」ということですが、この場合の住宅購入予算は、

①400万円+②0円+③4,500万円=4,900万円

が予算の上限額ということになります。

不動産購入時には諸費用を忘れずに!

では、Aさんは4,900万円の物件を購入できるでしょうか?

結論から申し上げますと、4,900万円の物件を購入すると予算オーバーになります。

無理やり住宅ローンの借り入れ額を増やすことは可能かもしれません(金融機関によって基準が異なりますので、基準が緩いところならもっと貸してくれるでしょう)が、ここではその選択肢は考慮しないことにしましょう。

ではなぜ予算が4,900万円なのに4,900万円の物件が買えないのでしょうか。

答えは簡単なことですが、不動産の購入には物件代金の他に諸費用がかかるからです。

諸費用とは、

・仲介手数料
・印紙代
・登記費用(登録免許税、司法書士手数料)

などを指します。

新築住宅で売主から直接買う場合、仲介手数料はかからないこともありますが、反対に水道引込費用や外構費など、また新築マンションの場合は修繕積立一時金などが物件代金とは別途にかかるケースもあります。

外構費などは高額になるケースもあるので事前に確認が必要ですが、その他の諸費用は目安として、物件価格の1割程度を予算計上しておくと良いでしょう。

つまり、物件価格が4,500万円であれば、諸費用は450万円、トータルで4,950万円くらいの買い物となりますので、Aさんが購入できる物件の上限価格は4,500万円となります。

不動産購入時に住宅ローンで「借りてもいい額」

Aさんが4,500万円の物件を購入し、諸費用併せて4,900万円で収まったとしましょう。

当初の計画通り、ローン借り入れ額は4,500万円、持ち出し資金は400万円です。

毎月の支払額
①不動産購入前 100,000円
②不動産購入後 122,364円
②-① +22,364円

ローンの返済が始まると、毎月122,364円が通帳から引き落とされます。

購入前は家賃として10万円払っていましたので、約2万2千円の負担増です。

次年度からは固定資産税も掛かります。

家賃 固定資産税 ローン返済額 合計
(年間)
年間の負担増
不動産購入前 100,000円
(年間1,200,000円)
0円 0円 1,200,000円
1年目 0円 0円 122,364円
(年間1,468,368円)
1,468,368円 +268,368円
2年目 0円 120,000円 122,364円
(年間1,468,368円)
1,588,368円 +388,368円
3年目まで 0円 120,000円 122,364円
(年間1,468,368円)
1,588,368円 +388,368円
4年目以降 0円 180,000円 122,364円
(年間1,468,368円)
1,648,368円 +448,368円

購入した物件が新築戸建だとしたら、当初3年間は建物部分の固定資産税が半額になる減税措置がありますので、ここでは3年目までは12万円、以降は18万円と仮定しましょう。

すると、年間の負担増は当初3年間は388,368円、以降は448,368円となります。

もしこれがマンションなら、管理費、修繕積立金、ガレージ代等が毎月プラスされますので、月額でさらに4~5万円上乗せされることもあります。

比較しやすいようにまとめてみましょう。

(賃貸の場合)
家賃
共益費
ガレージ代(必要な場合)
更新料の月割り
(購入した場合)
住宅ローンの返済額<
固定資産税の月割り
管理費・修繕積立金(マンションの場合)
ガレージ代(必要な場合)

ランニングコストを比較する上では、上記のような項目を考えなければなりません。

(賃貸の場合)
家賃 + 共益費 + ガレージ代 100,000円
更新料の月割り 4,000円
合計 104,000円
年間住宅費 1,248,000円

仮に、賃貸条件がガレージまで含めて月額10万円、更新料の月割りが4,000円だとすると、住居費はトータルで月額10.4万円、年額124.8万円になります。

これに対してAさんが先程の条件で新築戸建て住宅を購入した場合、住居費は月額13.2万円(簡略化のため千円以下切り捨て)、年額158.4万円となります。

(新築戸建て住宅を購入した場合)
①住宅ローンの返済額 122,000円
②固定資産税の月割り 10,000円
住宅費(①+②) 132,000円
年間住宅費 1,584,000円

管理費・修繕積立金・ガレージ代が月額4万円の新築マンションを購入した場合は、住居費が月額17.2万円、年額206.4万円となります。

(新築マンションを購入した場合)
年間住宅費 1,584,000円
住宅費 + 管理費・修繕積立金 + ガレージ代 40,000円
(年間480,000円)
年間住宅費 2,064,000円

この金額が、Aさんの家計にとってどのような影響を及ぼすのでしょうか。

①賃貸の場合 ②新築戸建て住宅を購入した場合 差額
(②-①)
月間住宅費 104,000円 132,000円 28,000円

戸建てのケースで検討すると、住居費の負担増は月額2.8万円です。

もともとの住居費10万円が余裕のある金額であったとしたなら、許容範囲かもしれません。

他方、住居費10万円がギリギリの金額だったなら、家計を切り詰めないと増額分の2.8万円を捻出できないことになります。

住宅購入の前後で家計を見直すということはよくありますので、後者であっても問題ないケースもあるでしょう。

しかし、増額ありきで家計を見直すのは窮屈かもしれません。帳尻合わせでどこかにしわ寄せがくる恐れがあります。

そこで、住宅購入予算の最も賢い立て方は、次のような順に考えていくことです。

  1. 現在の住居費をもとに家計を見直し、月額(ないし年額)の住居費上限額を決める
  2. 希望物件の種別(主に戸建てかマンションか)毎にローン以外の月額固定費をイメージする
  3. ①-②の予算内でローン返済額の上限を見定め、そこから借り入れてもいいローン金額を逆算する
  4. ローン借入額の予算が決まったら、自己資金などを合わせて住宅費の予算総額を計算する

ふたたびAさんで考えてみましょう。

  1. Aさんは家計の状況から、現在の月額住居費10.4万円はほぼ適正だと判断し、若干の負担増にも耐えられると考えた。
    そこで、月額住居費の上限を11万円とした。
  2. Aさんは新築戸建てを希望している。固定資産税は当初3年間は月割りで1万円、以降は1.5万円と仮定する。
  3. ①-②=9.5~10万円だが、今後の昇給も期待して、ローン返済上限を10万円に設定した。
    住宅ローンシミュレーションを利用し、借り入れ期間35年、利率0.775%で3,600万円借り入れた場合、返済月額が97,891円であることがわかった。
  4. 自己資金は400万円なので、住宅ローン3,600万円と合わせて4,000万円が予算総額となる。
    諸費用を考慮すると、価格3600~3700万円までの物件が無理なく買える金額だと判断する。

Aさんの家計にとっていくらの住居費が適正なのかは、Aさんの主観によります。
自分で判断できない場合はファイナンシャルプランナーに家計相談するのもよいでしょう

回答者:FP

上記のように考えると、住宅ローンの借りられる額から考えた場合と大きな隔たりがあることが分かります。

予算および物件価格にして800~900万の差です。

「借りられる金額」≠「借りてもいい金額」

これが重要なポイントです。

Aさんの場合でも5,000万円近い物件を無理やり購入することは可能でしょうが、家計に余裕も柔軟性もなくなります。

さらに注意すべきことは、これらの条件は変動金利を前提にしています。

金利が上昇した場合、途中で返済額が増えるリスクも十分考えられます。

借り入れ期間が短かったり、繰り上げ返済をして期間を短縮したりという計画であれば幾分そのリスクも和らぎますが、それでも当初からギリギリの返済額では非常に危ないでしょう。

健康に働けて順調に昇給し、トラブルもなく金利も上がらないという恵まれた環境であれば無事完済までたどり着けるかもしれませんが、自分でコントロールできない外的要因が多すぎます。

  • もし離職したら?
  • 病気になったら?
  • 金利が上がったら?
  • 親の介護に費用が掛かるとしたら?

なんでもかんでも不測の事態を考えすぎては身動きできないかもしれませんが、多少の想定外が起こっても家計に余裕が、柔軟性があれば対処できることも事実です。

銀行や不動産屋さんは購入後の家計がどうなるかまで面倒見てくれることはありません(不親切なのではなく、専門外なのです)。

家計を守るのは自分自身であるということを自覚して、住宅購入予算を考えるようにしましょう。

田中裕晃

1級ファイナンシャルプランニング技能士

執筆者紹介 / 田中 裕晃

資格

CFP®・1級ファイナンシャルプランニング技能士・公認不動産コンサルティングマスター・宅地建物取引士・マンション管理士・住宅ローンアドバイザー・賃貸不動産経営管理士・不動産キャリアパーソン・損害保険資格・証券外務員2種

得意分野

ライフプランニング、住宅取得支援、不動産コンサルティング

経歴

京都市出身
京都府立大学 文学部史学科卒業
京都府立大学大学院 文学研究科史学専攻 博士前期課程修了(文学修士(歴史学))
大手賃貸仲介業者に就職、新人賞獲得。店長職を経験後、売買仲介業者として独立。
その後、株式会社大峰の代表取締役に就任、大峰FP事務所を開設し、現在に至る。

カテゴリー: マネーコラム